【寄稿】ローマ教皇のメッセージと継承センターの役割 濱住 治郎(日本被団協事務局次長)

ローマ教皇フランシスコは、昨年2019年11月23日から26日まで日本に滞在し、24日には広島平和祈念公園でメッセージを発表して核兵器廃絶を訴えました。

 「戦争のために原子力を使用することは、現代において、犯罪以外のなにものでもありません。人類とその尊厳に反するだけでなく、…未来におけるあらゆる可能性に反します。」

 「戦争のための最新鋭で強力な兵器を製造しながら、平和について話すことなどどうしてできるでしょうか」

 「真の平和とは、非武装の平和以外にありえません。それに、『平和は単に戦争がないことでもなく、…絶えず建設されるべきもの』です。」

 これらの言葉はどれも心に響くものであり世界に訴える力を持っていますが、次の言葉は、私たちノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会を進めるものにとって共感できるとても大事な言葉のように思えます。

 「私たちは歴史から学ばなければなりません。思いだし、ともに歩み、守ること。この三つは倫理的命令です。…この三つには、平和となる道を切り開く力があります。したがって、現在と将来の世代が、ここで起きた出来事を忘れるようなことがあってはなりません。記憶は、より正義にかない、いっそう兄弟愛にあふれる将来を築くための保証であり起爆剤なのです。すべての人の良心を目覚めさせられる、広がる力のある記憶です。…これからの世代に向かって、言い続ける助けとなる記憶です。二度と繰り返しません、と。だからこそ私たちは、ともに歩むように求められているのです。…希望に心を開きましょう。…」

 そして、最後に「原爆と核実験とあらゆる紛争のすべての犠牲者の名によって、心から声を合わせて叫びましょう。戦争はもういらない!こんな苦しみはもういらない!と。私たちの時代に、わたしたちのいるこの世界に、平和がきますように。」と述べました。

 原爆にあい生き残った人たちは全国各地で立ち上がり、日本被団協という組織をつくって、「ふたたび被爆者をつくるな」「核兵器なくせ、原爆被害に国家補償を」と長い間求めてきました。そして、ついに2017年に国連で「核兵器禁止条約」が採択されました。しかし、まだ、世界には14,000発もの核兵器があり、新たな開発も進められています。

 原爆が広島・長崎で何をもたらしたのか、人間として死ぬことも生きることも許さなかった原爆の「反人間性」を訴え、伝えていかなければなりません。原爆のもたらしたありのままの姿を、被爆者の体験とその後の歩みを次の世代に継承していく必要があります。このために、「記憶・たたかい・運動」を継承するセンターが求められています。紙で、映像で、デジタル・データで保存して、それを閲覧したり、話し合い交流したりすることが出来る場をつくりたいと思っています。

 今この時代に、私たちは核兵器や戦争にどのように向き合い、どんな未来を子どもたちに残すことが出来るでしょうか。被爆者の体験とたたかいの記録は、それを考え学ぶための宝庫です。「センター」は私たち自身と私たちの子孫のために、非核・平和の世界をつくるための知恵を継承しようとするものです。

 ローマ教皇のメッセージの具体化は、「継承センター」の目的と役割につながるように思えるのです。

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