資料庫部会の取り組みから(2) 前川多美江さん(歌集)から全歌集(4冊)の寄贈

長崎で被爆した歌人、前川多美江さんは、1954年に短歌と出会ってから長い中断をはさみ、1993年に竹山広を中心とする「ながさき短歌会」に参加して再出発。これまでに4冊の歌集を上梓しておられます。

すでにご寄贈いただいた『水のゆくさき』(2012年刊)、『水よ輝け』(2017年刊)に加えて、第一歌集『ガラスのスワン』(2001年刊)、第二歌集『水と水音』(2007年刊)についておたずねしたところ、このほど、報道機関の問い合わせにもお断りしてお手元に残されていたという各1冊を継承する会にご寄贈くださいました。

海亀の産みつつ眼に流すもの そののち長くわれは流せり(『ガラスのスワン』)

生家跡 爆心地にむく石垣が石の鱗を落しはじめぬ(『水のゆくさき』)

七十年後のこの生徒らを思いまる献水桶の水よ輝け(『水よ輝け』)

これらの歌集には、長崎の原爆についてはもとより、生後八日目で喪われたお子さんのいのち、祖父母や両親などと暮らした幼き日の「原爆だけでない長崎」、そして、全体をつらぬく「水」に託された若い世代への希望などが詠われており、いわば前川さんの自分史が歌に結晶した作品群とも言えそうです。

師・竹山広氏からは「対象そのものは極めて日常的な素材である。しかしどの歌も、眼前にある現実が、言葉を組み立てる作業の中で、作者自身にしか見えない詩的な色合いを付加され、それが作品の立体的な風姿を作り出している。こういうところが前川作品の優れた個性であり魅力である」と評されています。

貴重な作品のご寄贈に感謝し、大切に保管し活用させていただきます。

コメントを残す