被爆者運動から学び合う学習懇談会 シリーズ4-(2) 「「要求骨子」から「基本要求」へ~国家補償論の発展をふり返る~」

「被爆者運動から学び合う学習懇談会」シリーズの4回目(6月4日(土))、「「要求骨子」から「基本要求」へ~国家補償論の発展をふり返る~」の報告をうけて、被団協の国家補償要求と運動について論点をさらに議論し深める2回目の学習懇談会が7月23日(土)、「「原爆被害への国家補償」について考え合う=「要求骨子」から「基本要求」へ・その2」としてプラザエフの5階会議室で開かれました。参加者は、前回からの継続の方に初めての方も含めて28人、広島や愛知から参加された方もありました。

はじめに前回報告者の栗原淑江さんが、問題提起の要点を、①施策の対象となる原爆被害とは何か、②「国家補償」要求の制度のなかみ(「基本要求」で整理された国家補償の4本柱)、③原爆被害をもたらした日本政府の責任(戦争を遂行した国の責任)、④二大要求(核兵器廃絶と原爆被害への国家補償)の関連、の4点にまとめて報告しました。

これを受けて、時間いっぱい活発に議論が行われました。そのなかで出された意見の概要は以下のとおりです。

○ 国が施策の対象とする原爆被害は、原爆の放射線による障害にしぼられてきた(医療法(1957))。被爆者運動は自らを死没者・遺族・家族を含めた「原爆被害者」としてとらえ、運動の初期から精神的な苦しみにも着目。国家補償要求を掲げた運動で追い詰められた国は、障害の範囲を外傷性のものから内部疾患を含むものへと拡大し、諸手当の所得制限を撤廃するなど、制度の改善を図ってはきたが、現行の「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」でも基本は変わっていない。

○ 国家補償には、① 被害への償い、② 責任の明確化、③ 再発防止の意味がある。日本は、軍人軍属には補償しながら、民間人にも、戦後日本人でなくなった軍人にも、補償していない。国家のために死んだ人(軍人・軍属)には50兆円もの予算を使いながら、空襲被害者については調査さえしていない。戦争中の戦時災害保護法は、国が臣民に恩恵として与えるものに過ぎなかった。ヨーロッパでは戦前から、生命や身体障害への国家補償はしており、軍民を区別しているのは日本のみ。命や身体の被害まで斬り捨てているのは、戦争中だから仕方ないと、国家の戦争責任を明確にしていないからだ。

○ 被爆者が自ら立ち上がってたたかいをしてこなければ、国はやってくれるものではない。被爆者が求める国の償いとは、国がふたたび被爆者をつくらないと国民に約束すること。同じことが起こらないよう国の政策転換を求める運動で、これは国民に支持してもらえなければ実現しない。

○ 補償と救済ということばがあいまいに混用されている。「被爆者は補償されている」と言われることがあるが、今の法律は(被害への)補償ではない、現在の状態に着目した“救済法”だ。オバマの広島訪問に際しての、〈被爆者はアメリカに謝罪を求めるのか否か〉にポイントをおいたマスコミ取材には違和感があった。謝罪は当たり前のことで、核兵器を廃絶すればアメリカが犯した罪への償いだと受けとるということだ。罪と責任についての日本人の責任感覚をきちんとしなければいけないのではないか。

○ 今年の被団協の方針では、「国の償い」を求めてきた5年間の運動を総括し、一区切りして考えてみようとしている。沖縄戦や空襲被害など他の戦争被害者との連帯を広げながら改めて被爆者の問題を考えてみれば、見えてくるのではないだろうか。国の償いと核兵器なくせの2つの課題は被爆者の悲願であり、こうした(学習の)機会を継続してもってほしい。

2回をつうじて、さらに詰めていくべき課題はたくさん残されています。討議をふまえ、司会の濱谷さんから以下のような課題が投げかけられました。

1.今の法律(原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律)は「国家補償」ではない。それはどういう意味においてなのか。

2.二大要求の不可分の関係について、分かりにくいという意見も出た。「基本要求」でおさえている理念的なことばをもっと詰めていく必要がある。

3.国の償いとは同じことを許さないことだ、という点について、それは援護法制度の中身とどう関連しているのか。

新法が制定されて20年。「基本要求」から30年が経っている。「基本要求」に示された4つの要求も理念的、抽象的になってきているきらいがあり、今の段階であらためて見直してみる必要はないだろうか。

以上

なお、本シリーズ、次回以降の予定は次のとおりです。

◆ シリーズ5 沖縄戦 被害・加害の実相と被害者のたたかい

日 時:9月9日(金)13:30~16:30

場 所:プラザエフ5階 会議室

問題提起:瑞慶山 茂さん(弁護士)

瑞慶山さんは、幼少時、南洋パラオからの避難船沈没から生き残りました。沖縄戦被害者には民間人を排除した「軍人軍属遺家族等援護法」(「戦闘協力」が条件)が適用されてきましたが、2010年、この申請を却下された人、申請しなかった人たちで「沖縄・民間戦争被害者の会」を結成。一般民間被害者を救済する目的の「新援護法」の制定運動(立法的解決)とともに、沖縄戦、南洋戦の被害への国家責任を問う国家賠償請求訴訟(司法的解決)をめざしています。被害継承運動は当然だが、これと加害者に法的責任を認めさせる被害回復運動は一体不可分だといわれます。

今回の学習懇談会は、日本被団協との共催企画。詳細・申込方法は同封チラシをご参照ください。

◆ シリーズ6 被爆者運動と裁判闘争(仮題)

日 時:11月12日(土)13:30~16:30

場 所:プラザエフ5階 会議室

問題提起:中川 重徳さん(弁護士、継承する会理事)

(NPO法人 ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会 継承交流部会)

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